Project 311

ハッシュタグの利用傾向調査

目的

• 震災時のTweetにおけるハッシュタグの利用状況を調べることで、話題の推移、ハッシュタグ間の関係性などから震災時のコミュニケーションにおいてハッシュタグが果たした役割を分析する。分析結果に基づき、今後の震災時により効率的で円滑なコミュニケーションを行うためにどのようにハッシュタグを利用することが望ましいかを検討する。

手法

• ハッシュタグの共起傾向の調査：
   ハッシュタグ間の関係性をTweetにおける共起の傾向から探る。ハッシュタグの関係性はおそらくTwitter上での話題の関係性にも何らかの形で対応しており、トレンド分析等にも活用できる可能性がある。
  
  
• ハッシュタグごとの出現名詞傾向の相違の調査：
   他のハッシュタグとの利用傾向の差異により、どのような名詞群がそのハッシュタグを特徴的に表すのかを分析。ハッシュタグの分類やハッシュタグ間の関係性の抽出などを試みる。

現在までの結果

• 震災後一か月のハッシュタグの傾向の分析：
   『東日本大震災でのTwitterハッシュタグの利用傾向調査―震災時のICT活用に向けて―』(情報知識学会誌, 23(3), 355-370, 2013)
  
  
• 震災後数か月間のハッシュタグの傾向の分析：
   『東日本大震災後のTwitter利用傾向 -震災関連ハッシュタグの計量的分析-』(情報知識学会誌, 22(2), 97-106, 2012)
  
  
• 中間報告発表資料(2012/10/12)：
   Project 311 中間報告会発表資料
  
  
• 最終報告発表資料(2012/10/28)：
   Project 311 最終報告会発表資料
  
  
• 震災後一週間のハッシュタグの共起ネットワーク：
   あるハッシュタグを用いて情報を閲覧するユーザーからアクセスしやすいハッシュタグの関係性の可視化を念頭に置いて、一時間当たりの利用回数20回以上のハッシュタグに関して、当該ハッシュタグの全出現数の10%以上のTweetで共起するハッシュタグに対してエッジを張った（有向グラフ）。図中でエッジ間のウェイトは設定しておらず、各ノードのフォントサイズはTweet数の二乗根に比例している（フォントの面積がTweet数に比例）。例えば3月11日18時から19時の間では下図のようなネットワークが形成される。
  
  
  
  
  
  各時刻のネットワーク図
  

  03-11 09   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21   22   23

  03-12 00   01   02   03   04   05   06   07   08   09   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21   22   23

  03-13 00   01   02   03   04   05   06   07   08   09   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21   22   23

  03-14 00   01   02   03   04   05   06   07   08   09   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21   22   23

  03-15 00   01   02   03   04   05   06   07   08   09   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21   22   23

  03-16 00   01   02   03   04   05   06   07   08   09   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21   22   23

  03-17 00   01   02   03   04   05   06   07   08   09   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21   22   23

  03-18 00   01   02   03   04   05   06   07   08

  
  
  ネットワークから読み取れるいくつかの特徴
  • リツイートを含む場合、含まない場合、リツイートのみの場合にわけてそれぞれ共起ネットワークを作ると、震災関連のハッシュタグは他のハッシュタグに比べてリツイートされる比率が著しく高く、全体でのオリジナルな発言回数の場合とリツイートのみの場合のネットワークは形状が大きく異なる。また中心的位置を占めるいくつかのハッシュタグの関係性なども大きく異なっている。
    
  • 3月11日14時から15時の間では、地震関連のタグとして#earthquake、#eqjp、#saigaiが特にリツイートで頻繁に用いられている。しかし3月11日15時から16時の間では#jishinが震災関連タグの中心的位置の一つを占めるようになり、これはその後一週間変化しない。
    
  • 3月11日16時から17時の間には#jishinと離れた位置に#j_j_helpmeのタグが特にリツイート数で大きく表れる。その後二時間ほどで#jishinと#j_j_helpmeの関連が強くなることが伺われる。徐々に#j_j_helpmeは他に#anpiや#hinanとも強く共起するようになりその後、#j_j_helpmeよりも#anpiが大きくなり、緊急救助から安否確認に情報の中心がシフトしていく様子が見受けられる。
    
  • 震災直後に他に多いハッシュタグとしては#prayforjapanや#nhk、#nhk_news等があるが、#prayforjapanは他の震災関連ハッシュタグに比べて相対的にリツイートの比率が低く、逆に#nhk_newsは非常にリツイートの比率が高い。また当初はいずれも#jishinタグから少し離れた位置に出現する。
    
  • 3月11日23時から24時の間に他のハッシュタグのクラスタから離れた位置に#save_xxの形式のハッシュタグのクラスタが出現する。出現時には#save_fukushima、#save_miyagi、#save_yamagata、#save_akita、#save_aomoriそして#save_tohokuの東北地方の県名と東北全体を示すタグによってクラスターを形成している。3月12日01時から02時の間に#save_iwateが加わり、3月12日03時から04時の間に#save_sendaiや他の震災関連タグとの共起が強まるが、当初は同じ県内の地名のタグなどとよりは#save_xxのタグ同士での共起が強い状態が13日の朝方まで続く。その後は徐々に#save_xxが同じ県内の地名のタグや同じ県内の地名を持つ#save_xxのタグと共起するようになってくる傾向がみられる。地域名のタグが比較的初期からまとまってみられるのは青森と茨城である。
    
  • 3月12日17時から18時の間には#yashimasakusen110312というアニメを元にした節電を呼びかけるハッシュタグが出現し、その後#yashimaのような日付の限定のないより省略した形が中心となってその後もひとつのまとまりを維持していく。
  • 3月14日14時から15時の間以降に突如#edano_nero、#kan_okiro、#jieitai_taberoのハッシュタグのまとまりが現れる。その後#edano_neroを中心に種々の類似ハッシュタグが出現し、その後も比較的大きなまとまりを維持する。